【連載】いくつになっても男と女⑤
その5 欲望は人それぞれ。満たすための行動力も生きる原動力?
「真性包茎の方は年齢問わずけっこう多いです。なんで病院にいかないの?と私は思いますけど、既婚者でお子さんもいる方もいて、ほんとに不思議なんですよ。
独身で真性包茎の方もいました。その人は、女の人に馬乗りになって首を絞められるのが好き。いつも呼ばれて、何時間も首を絞めているので、ほんとに疲れて大変でした。あげく便利屋さんの掃除をするパートのおばさんにも、首絞めプレイを頼んでいたんです。そっちのほうが高額なのに。でもAVは大嫌いで女性の裸にも興味がなかった。簡単に手術できるのにしない。今の状態が好きなドMだったと思います。自分がみじめな感じがたまらないんでしょうね」
A子さんは淡々と話すが、本当にいろんな人がいるものだ。他には変わったオーダーはあるのか?
「衣装を持参して着てほしいという依頼はあります。先日も、エナメルの悪役みたいな、虫歯菌みたいな(笑)。つまり女王さまみたいなコスチューム。あとは網みたいなので、どっちが前か後かわからないようなの。ほんとに1回しか着ないのでもったいないんですけど、それ以外使い道がないですよね」
■アラフィフデリヘル嬢が気づいた。介護施設ではできないこと
「入居者の方は気の毒に見えました。レクリエーションで、ぬり絵や折り紙などのプログラムをやっていても、時間になると途中で取り上げられちゃうんです。スケジュール通りに進めることと、転倒させないとか安全確保が最優先。だからお腹もすいてないのに3食時間通りに食べさせられる。本人がやりたくもないのに、折り紙を折ったり童謡を歌ったり。作った作品は壁に貼り出して、面会にきたご家族にみんな楽しく過ごしていますよというアピールが理解不能でした。お年寄りになると人権がないのかな?頭脳明晰な高齢者にとっては老人扱い以上に子ども扱いが、我慢ならないと感じました」
介護施設で働いた時に、A子さんがもうひとつ気が付いたことがあった。
「30代の美人のヘルパーさんがいて、「なんでこんなキレイな人が!?」と。それで思い出したんです。私の家の近所に80代後半で犬を飼っている老人の男性がいました。がんを患い、近隣の人達と私も協力して、ローテーションで犬の散歩を手伝っていました。そこに訪問ヘルパーさんで来ていたのはあの30代の美人さんだった。「女なんて簡単だ、お金あげたら何でもできる」とそのおじいさんは自慢げに話していて、ヘルパーさんにお金払ってどうやらいろいろさせていたらしいんです。しかし、亡くなった後には、貯金がごっそりなくなっていたんです!
訪問型の介護ヘルパーさんに体を洗われて、ちょっとしたソープ感覚になるのかも。認知症気味で、相談相手になってもらっている間に、お金を奪われるケースもありえるかなと。私は自責の念が強いので、悪いことができません。いただくのは決まったギャラのみで、それ以上でもそれ以下でもありません。トラブルに発展するのも怖いので。プラスを受け取る人は意外といますので余計なお世話かもしれませんが、高齢のご両親にご家族は高額のお金を持たせないほうがいいかもしれませんね」
長生き=幸せ、短命=不幸が呪縛のようになっているが難しい問題だ。親が高齢になり、弱っていくのも見たくないし、向こうだって見せたくない。だったら風俗に通っているぐらいのほうが健全なのか?それも見たくないし、答えはでなかった。
「確かに長年お付き合いのあるお客様は高齢化しています。病気で入院されたり、施設に入られたと聞くと、メッセージは送ります。でも介護施設に呼ばれて伺っても、あなた誰ってことになりますよね。2ヵ月ぐらい連絡がないと亡くなったのかなと、調べてしまいます」
病で倒れるまで風俗に通えていたのは、ある意味幸せな人生だったのかもしれない。
続きは次回。