
生理前・生理中の痒みと更年期との関係性〜原因と対処法を部位別にご紹介〜
これは、女性ホルモンの変動による知覚過敏や、免疫力に低下による肌バリア機能の低下、さらに生理用品による接触性皮膚炎等が原因です。
1.全身の痒みとホルモンの関係
この時期女性は、妊娠していなくても、妊娠の練習をしていると考えられます。
それで妊娠を維持するホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増加します。
しかし本当の妊娠ではないので、女性ホルモンであるエストロゲンは減少してしまいます。
妊娠維持ホルモンであるプロゲステロンが増加すると、物質を体の中に貯めておく傾向になり、水分代謝も悪くなり浮腫みます。
一方エストゲンが減ると、皮膚の乾燥はすすみます。
さらに脳にもエストロゲンの低下は作用して、感覚過敏になります。
つまり部分的に浮腫んで、部分的に乾燥して、その浮腫みや乾燥を感じやすくなるのです。
さらに妊婦は、胎児を自分の免疫力で攻撃しないように免疫力が低下するのですが、妊娠の練習期間である黄体期も、免疫力も低下します。
この結果、皮膚のバリア機能が低下します。
これらの現象が重なりあって、普段は何ともない衣類とのちょっとした摩擦でも、全身に痒みを感じやすくなります。
2.フェムゾーン(腟と外陰)痒みの原因と対処法
原因は大きく分けて以下の3つです。
(1)摩擦・乾燥・ムレによる刺激
生理用品(ナプキン、おりものシート)の長時間使用によるムレや、下着との摩擦、過度な洗浄による乾燥などによる接触性皮膚炎の発症
対処法
清潔・通気性
基本的におりものシートの使用は、生理前2週間前後(排卵日前後)にとどめ、他の時期は木綿のショーツに変更します。
もちろん勝負下着をつける時は、例外です。生理用ナプキントは、2~3時間ごとに交換し、経血を肌に残さないようにします。
生理用ナプキンをやめて、タンポンや月経カップに変更してもよいでしょう。
洗浄・保湿
刺激の少ない弱酸性の洗浄料で優しく洗い、ゴシゴシこすらないようにします。
洗った後は、フェムゾーン(腟・外陰)用の保湿剤で保湿ケアを行うことが大切です。
(2)感染症(雑菌・カンジダなど)
過労等による免疫力の低下で、セックスをしなくても、腟内の常在菌のバランスが崩れ、雑菌や真菌(カンジダ菌など)が過剰に増殖することがあります。
対処法
強い痒みや、おりものの色・性状・臭いに異常がある場合は、自己判断せずに婦人科を受診しましょう。
(3)女性ホルモンの低下
エストロゲンの低下により、腟の粘膜や外陰部の皮膚が薄くなり(萎縮)、乾燥や刺激への防御力が低下します。これをGSM(閉経関連尿路性器症候群)と呼び、痒みや違和感、痛みさらに再発性膀胱炎や性交痛等の症状が起こることがあります。
対処法
GSMが疑われる場合は、婦人科や女性泌尿器科・女性外来で、ホルモン補充療法や局所的なエストロゲン製剤の使用など、専門的な治療を相談することが重要です。
3.その他の部位の痒みの原因と対処法
ホルモンバランスの乱れにより、頭皮も乾燥しバリア機能が低下し、痒みが生じることがあります。
対処法
刺激の少ないシャンプーを選び、乾燥対策として頭皮用の保湿ローションなどを使用します。
鼠径部(そけいぶ)やアンダーバスト:
下着の締め付けや縫い目、汗によるムレや摩擦で、かぶれや痒みが起こりやすい部位です。
対処法
締め付けの少ない、縫い目やタグのないインナー(特に生理前・生理中は)を選び、汗をかいたらこまめに拭き取るなど清潔を保ちましょう。
それ以外の全身のかゆみ:
女性ホルモンが低下すると、全身の皮膚が乾燥し、免疫力も低下するため、皮膚の炎症が起こりやすく、また炎症によるかゆみや痛みを感じやすくなります。
40代以降は、入浴後は、フェムゾーンを含む全身の保湿ケアで乾燥を防ぐことが、かゆみや痛みを感じない生活を送る第1歩です。
保湿剤は、全身用であれば安価な製品であっても大丈夫です。
1日1回全身保湿ケアを習慣化しましょう。
4.まとめ
セルフケアで改善しない場合や、強い痒み、異常なおりものを伴う場合は、感染症や更年期に関連する疾患の可能性もあるため、婦人科や皮膚科へ気軽に相談に行きましょう。
特に40歳以降は、かゆみがなくても、全身の保湿ケアを習慣化して、さらに痒みが強い場合は、更年期障害の可能性もあるため婦人科・女性泌尿器科・女性内科を受診しましょう。