「生理前に眠くなる」「更年期になって眠れない」とお悩みの女性は多くいらっしゃるようです。
女性ホルモンは主に妊娠・出産に関わる働きをしますが、睡眠に関わる働きも持っていることをご存知でしょうか。
今回の記事では、女性ホルモンと睡眠の関係を解説し、良い睡眠を得るためのポイントについてご紹介します。
女性ホルモン・エストロゲンとプロゲステロンの分泌量は、月経周期によって変動しています。
エストロゲンは、妊娠の準備のために子宮内膜を厚くする働きのほか、睡眠に関わるホルモンのメラトニン分泌にも関与していることがわかっています。
また、プロゲステロンは妊娠を維持する働きがありますが、睡眠にも影響すると考えられています。プロゲステロンの分泌量が増える高温期には、睡眠のリズムに関わる深部体温のメリハリがつきにくくなるためです。
さらに、更年期には女性ホルモンのバランスが乱れやすくなります。
ホルモンバランスが乱れると、睡眠サイクルにどのような影響が出るか見てみましょう。
月経前に眠くなる方は多いようで、PMSの症状の1つにも挙げられています。
月経前は高温期であり、プロゲステロンの分泌量が増加してエストロゲンの分泌量は低下します。先ほどご紹介したように深部体温と睡眠と覚醒のメリハリがつきにくくなるだけでなく、プロゲステロンの持つ鎮静作用のために日中でも眠くなりやすいのです。深い眠りにつきにくく、睡眠の質が低下することも報告されています。
妊娠中、約80%もの方が睡眠に関わる悩みを経験するという報告があります。特に妊娠後期に睡眠のトラブルが多くなるようです。妊娠中は女性ホルモンがどんどん増加し、プロゲステロンも例外ではありません。月経前のような状態が続くほか、大きくなった子宮が膀胱を圧迫するための頻尿や胎動で、夜に覚醒することが多くなります。妊娠による代謝の変化で起こる鉄不足や肥満に伴う症状も、睡眠障害のリスクを高めると知られています。
出産後にホルモンバランスは妊娠前に戻りますが、夜間の赤ちゃんのお世話などで睡眠不足になりやすい環境です。
更年期には社会的立場の変化や子どもの独立など多くのストレスに直面し、睡眠のほかにもさまざまな症状が現れます。
睡眠に関わる症状では、エストロゲンの分泌低下による自律神経の乱れや、ホットフラッシュなどの更年期症状のための不眠、中途覚醒、眠りの浅さ、プロゲステロンの欠乏による不眠が知られています。
また、閉経期以降の女性に増える「むずむず脚症候群」「睡眠時無呼吸症候群」の症状でも睡眠障害が起こると知られているほか、閉経期に増加するうつ症状も不眠症状のリスクです。
このように、どのライフステージにおいても女性と睡眠トラブルは切り離せないものです。日常生活で良い睡眠のためにできることをご紹介しますので、積極的に取り入れてみましょう。
規則正しい食生活は、快眠への第一歩です。起床・就寝の時間を一定にして、適度な運動を心がけましょう。就寝1時間前くらいからパソコンやスマートフォンの使用を控えたり、就寝2~3時間前の入浴、枕や布団などの寝具を自分に合ったものに変えたりするのも効果的です。
PMSや更年期による睡眠障害は、一度婦人科を受診して相談してみましょう。ホルモン補充療法が更年期障害は不眠、中途覚醒、睡眠の質の改善に改善に有効だと言われています。
睡眠記録アプリでは、起床・就寝時間や睡眠時間、睡眠の質などを記録して可視化できます。データを分析して睡眠の質を向上させるアドバイスを提示する、睡眠サイクルに合わせて自然な目覚めを促すためのアラーム機能、といった機能がついたものもありますので活用してみてはいかがでしょうか。
女性ホルモンのバランスが睡眠に与える影響は大きく、それぞれのライフステージに応じた対策が必要です。健康な睡眠は心身の健康の維持にもつながりますので、積極的な対策を心がけましょう。