【連載】いくつになっても男と女⑥
その6 アラフィフデリヘル嬢Aさんは、普通を大事にしていた!
「私ってまじめでしっかりものに見えませんか?これ全部コスプレなんです。ダメですよ、自分の好きな格好なんてしてちゃ。なるべく個性を消して、わざと当たり障りのない、地味でいもくさい感じにしています。洋服も髪型もメイクも普通で、アクセサリーもあまりつけない。洋服も高級ブランドなんてもってのほか。下着もセクシーランジェリーではなく、ベージュや白にしています」
これにも、私は目から鱗がボロンボロン。いろんな戦略があるのだ。
「体のメンテナンスは、プロテイン、ビタミンCは大量摂取。筋トレもしています。性感染症の検査は1年に1回。自分で郵送検査を受けています。お客様には絶対に避妊具はつけてもらう。それでも、のどは危ないので、うがいはしっかりしています。男の人は奧さんにうつしちゃうリスクを考えて、注意した方がいいと思います。今は梅毒が急増していますよね」
風俗に興味があれば、A子さんは私に鶯谷に行って取材したらと教えてくれた。駅近辺には若い人から年寄りまで、男性が一定間隔をあけて立っていて、手には示し合わせたようにデパ地下で買ったようなお菓子の袋を持っている。そこに妊婦さん、デブせん、女装子など、それぞれ待ち合わせの風俗嬢がやってくる。鶯谷は駅からスグにラブホに行けるのがメリット。池袋、渋谷、新宿は駅から遠い上に、カップル利用で混んでいて難民になることが多いそうだ。
なぜこの仕事を続けているのか? A子さんにやりがいを聞いた。
「基本はあくまでお仕事の関係ですが、気になってしまったお客様と仲良くなることかな。高齢のお客さんは人混みだと危ないので、自分の独断でご自宅の近くまで車で送迎したりします。お客様がホームレスになってしまって、役所に連絡して生活保護や仕事はあるけど住む家がない人の支援を調べたり。良好な関係になったりします。でも、次も指名してもらいたいので、安心させ過ぎてもいけない。じらさないと呼んでもらえないので、ちょっと冷たい感じにします。それも私の風俗嬢としての営業テクです」
風俗と介護、似て非なるものなのか? 答えがまったくわからないままだったが、高齢化社会の性の健康について、取材を続ける予定。