恋愛から読み解く名作② W・シェイクスピア作 『ハムレット』
世界で最も有名な悲劇の内の1つと呼べるような作品ではありますが、「タイトルは聞いたことあるけど内容はサッパリ」という方も多いのではないでしょうか。
タイトルにもなっている物語の主人公、ハムレットは、デンマークの王子です。
そして、そのデンマーク王宮内で繰り広げられるドロドロの争いこそが、『ハムレット』という作品のメインと言えるでしょう。
前置きはほどほどにして、本題に入っていきましょう。
とはいえ、0から話すのも難しいので、まずは一旦ストーリー冒頭の解説から。
物語が始まる前、ハムレットは人望の厚い将来有望な王子だったのですが、優れた王であった父親が蛇に噛まれて死んだという知らせが、彼の人生に大きな影を落とすことになります。
王の死後、一月もしないうちに、王の弟でありハムレットの叔父にあたる男が王位を継ぎ、母である王妃を娶ることになったのです。
新たな体制に馴染めないまま、ある日、王の幽霊が城壁に現れるという噂を耳にし、ハムレットはすぐさま駆けつけます。
そこで幽霊は、ハムレットにこう告げました。
「お前の父を刺した蛇は、いま王冠を被っている」
自らの叔父が、父を殺害し、その王位と母を奪い取ったという恐ろしい真実を知ってしまうハムレット。
そして彼は、確実に復讐を成し遂げるため、誰にも真相を勘づかれることの無いよう、父の死によって気が狂ってしまったフリをしながら、王宮へと戻っていきます。
信念や理想とのギャップに、自らの身を滅ぼすほど激しく悩みながら、ハムレットの孤独な復讐劇が始まります...
といったところまでが冒頭になります。
ここから重層的かつ奥深いストーリーが展開されていくのですが、当コラムが主に追っていくのは、『ハムレット』という作品のヒロインであり、残酷な運命に翻弄されあまりにも悲劇的な人生を辿りゆく、オフィーリアという少女とハムレットとの関係になります。
オフィーリアとは、どのような女性なのでしょうか。
主要な人物の1人として、殺害された王の有能な側近でありながら、新たな王にも変わらず忠誠を誓う、どうにも信用ならない大臣の男が出てきます。
オフィーリアは、その大臣の娘です。
物語が始まる前まで、ハムレットは彼女にかなり激しい恋心を抱いており、熱心な恋文も送っていました。
オフィーリア自身も憎からず思っていましたが、立場の違いもあり、なかなか順風満帆とはいかなかったようです。
そんな中、先述した通り、王弟による父王の暗殺という事実を知ってしまったことが、ハムレットの精神を復讐一色に染めてしまいます。
2人の関係性の変化を示す象徴的なシーンがあります。
『ハムレット』を代表する有名なセリフとして「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」というものがありますが、この独白の直後、城内でオフィーリアと出会うシーンです。
自分が気持ちに答えなかったことが、ハムレットの狂気の原因かと気遣うオフィーリアに対して、ハムレットは一方的な暴言を繰り返し、去ってしまいます。
オフィーリアは、ハムレットの変貌ぶりにひどく嘆き悲しみます。
どうしてハムレットはこのような態度を取ったのでしょうか。
ハムレットにとって、父という偉大な存在を裏切った母は、父を殺した叔父と同様か、あるいはそれ以上に許すことのできない存在になっていました。
愛するオフィーリアですら、いずれは自分を裏切るだろうという考えに取り憑かれてしまっていたのです。
そして物語が進行していくと共に、2人の関係性には、更なる破滅的な変化が訪れるのですが......
今回は、一旦ここまでとさせてください。興味を持っていただけていれば嬉しいです!では次回!