
痔があるとVIO脱毛は出来ない?
肛門科診療をしていても、「『痔があると脱毛できない』と聞いたので治したい!」という女性が増えてきました。
では「痔があると脱毛できない」という噂…、これは本当でしょうか?
ここでまずお話したいのが、「痔」と言っても、「いぼ痔(痔核)」「切れ痔(裂肛)」「痔瘻」の3大肛門疾患があり、そもそもどのタイプの痔の話なのかと言うこと。
「切れ痔」や「痔瘻」の場合は傷や感染に相当するため、局所的に高熱が加わる脱毛は炎症が悪化する可能性があり、おすすめできません。
ただ、どちらにせよ「切れ痔」の場合は肛門のきわから肛門内にかけてできる傷であり、よっぽどお尻の皮膚を引っ張ってこない限り、傷は見えないので、実際「切れ痔」上に脱毛器を当てることは不可能だと思います。
「切れ痔」の外側の皮膚部分に当てるのであれば理論上は問題ないはずですが、先に切れ痔を治しておくに越したことはありません。
また「繰り返した切れ痔」により傷の外側に炎症性に肥厚した組織が盛り上がってくるケースもあります。この場合はいわゆる照射できない「真性ケロイド」ではないのですが、照射で更に炎症を起こす可能性があり、脱毛はおすすめしません。そもそもここには基本的には毛は生えませんが…。
判断が難しいのが「いぼ痔」いわゆる「肛門の中のいぼ、もしくは外のいぼ(出っ張り)」です。「中のいぼ(内痔核)」の場合、基本的には粘膜なのでそもそも毛は生えておらず脱毛する必要もないですが、内痔核があっても肛門の外側の皮膚の脱毛は可能です。
では「外のいぼ(外痔核)」についてはどうでしょうか?
実は「お尻がデコボコしている」と来院される女性の多くは、実際は「肛門皮垂/スキンタグ」と言って、痔の残がいのような皮膚の突起を気にされているだけということもあります。
産後の女性の場合、出産時に大きく腫れた痔が原因のことも。
それ自体は、ただの伸びた皮膚のようなものなので脱毛も可能です。
この部分は毛穴はあるもののあまり毛が生えていない方がほとんどですが…。
ただし、外痔核の中でも「血栓性外痔核」と言って、血豆を形成する急性の外痔核(硬いシコリのように腫れてとても痛い)の状態の時は避けたほうがいいかと思います。
以上、細かくご説明しましたが実際脱毛エステ/クリニックに行かれても、肛門科医が診断するわけではないので、「そもそもそれは痔なのか?脱毛できるのか?」について専門的な判断は難しいと思いますし、施設より方針も様々なようです。
何か気になる症状がある方は肛門科を受診され、診断と脱毛の適応につき相談されると安心できるかと思います。